だいぶ山道を登ってきた。ナビの地図もだいぶ怪しい。

舗装がされているとはいえワゴン車には狭い道を待ち合わせ場所まで急ぐ。やっと待ち合わせの場所にたどり着くとちょっとくたびれた軽のワゴンから青いニットキャップを被った雨宮陽一さんが降りてきた。マル神農園の主力メンバーのひとりである。マル神農園は甲州市大菩薩嶺の麓 神金地区で無農薬・無化学肥料の野菜の生産販売をして地域を盛り上げようとするメンバーの集まりだ。

紅葉が目立つ甲州市の山の中腹辺りに位置する畑の空気は午後だというのにかなり冷たい。気温の差があるこんな気候も野菜達にはとても気持ちの良い土地なんだろう。

「大根から見に行きますか」と雨宮さん。

軽ワゴン車に乗り込むとクルリとUターンをしていく。
狭いコンクリート舗装の農道はこちらの5ナンバー車とはいえ8人乗りのワゴン車には厳しすぎる。なん度も切り返して追いかける。5分ほど走ると冬枯れの山の中に一面の緑。大根畑に着いた。

青々と茂る大根の葉。雨宮さんが腰を入れてぐんと踏ん張ると、両手の親指と人差し指で丸を作ったほどの、力強いぞと言いそうな大根の顔がするりと土中から現れた。強そうな葉は太いピアノ線が入っているようだ。大根おろしが無性に食べたくなった。この畑では三浦大根や文字通り芯が紅い紅芯大根など多品種の大根が無農薬で栽培されている。

今回の見学には東京のレストランからシェフとホールスタッフが同行している。
ふたりとも若い女性で一見青山あたりのパンケーキ屋に並んでいそうな感じの女子なのだが、山・土・野菜・狩猟肉・漬物…が大好物だそうである。前日も夜遅くまで仕事だった筈なのに朝からとてもテンションが高い。確かにこんな場所は品川区にはない。

まだ大根を抜きたそうにしている皆を急かして次の農場へ向かうことにした。
たくさんの大根が冷たい風に揺られて濃い緑の手を振っている。

大根畑

<続く>