カーブ アン。山梨市万力に生まれた新しいワイン醸造所。
安蔵正子ワイングロワーに会いに行ってまいりました。

ワイングロワーとはブドウ栽培からワイン醸造、そしてワインの文化を育てるまで担っている方のことを言います。
安蔵正子さんは山梨大学工学部科学生物工学科を卒業、D.U.A.D(ボルドー大学利き酒適正資格)、ワイン醸造管理士(エノログ)資格を持ち、経験も勝沼の老舗ワイナリーで多くの経験を積んだ後に渡仏。帰国後再び長年勤めたワイナリーで力を発揮しながら自らの醸造所の設立準備をし2022年果実酒酒造免許を取得。いよいよ2023年初リリースを迎えます。

ブドウ栽培やワインの知識が申し分ないのは言うまでもありませんが、感じたのは穏やかなお人柄に秘められたワインへの愛情・情熱でした。まさにワイングロワーが天職になっていると感じました。穏やかでやさしい語り口調は聞いていて心地よく、つい時間を忘れて引き込まれます。激しく熱を発散する情熱醸造家の勢いにも魅力はもちろん感じます。しかし安蔵正子さんの口調やお人柄は、自分の時間すべてをかけてワインと生きていく人生を最後まで歩き続けますといった静かな宣言にも感じました。自分の歩行スピードで、しっかり足裏全体で畑を感じワインを醸し、前に進んでいく、そんなイメージが湧きました。

ブドウ栽培やワイン醸造の知識や経験はたいへん豊富ですから、ただ穏やかに自然のままにのんびりとやっていくわけではありません。ブドウ品種の選定や醸造には安蔵さんならではの力と感性が生かされることでしょう。期待が高まります。実は私、2022年11月にすでに三種類ワインのテイスティングをしています。ここでインプレッションを書くのは憚られるので遠慮しますが、間違いなく期待して頂ける魅力的な酒質でした。

安蔵正子さんを紹介するうえで忘れてはいけない方がいらっしゃいます。それはご主人の安蔵光弘氏です。光弘氏はメルシャンのエグゼクティブ・ワインメーカーで、シャトー・メルシャンを含めて、メルシャン・ブランドのワインに関わられる大変重要な役職を担われている有名人。「シグナチャー 日本を世界の銘醸地に」は氏の生きざまが映画になった作品で、ワイン愛好家やワイン醸造・流通関係者には大変有名な映画です。ご夫婦揃ってワインとともに生きてきたおふたりと言えましょう。

「ボルドーでワインを造ってわかったこと」安蔵光弘著
ボルドーでワインを造ってわかったこと (日本ワインの戦略のために) | 安蔵 光弘 |本 | 通販 | Amazon

「コートドールみたいな畑の光景だと思えたんです」と笑顔で話す正子さん。

こんな方々のワインが山梨から発信されます。もう少しその報をお待ちください。楽しみです。

 

 

依田浩毅