エペルネに夏が来た。やっと来た。そんな想いだ。

上司の父、ドメーヌ4代目がこんなことを言っていた。「こんな年は初めてだよ。いつもなら、寒さや雨の心配をするのは5月の半ばくらいまで。そこを過ぎれば、おおよそ天気も落ち着いてくる。ところが、今年は7月になっても雨の心配をしている。異常だよ」。

顔見知りのヴィニュロンの中には、深刻なベト病(ブドウの病害のひとつ)の被害を受けた人もいる。でも必ずと言って良いほど「僕らは自然と働いているのだから、仕方ない。こういう年もあるさ」というようなことを言って、彼らは話を結ぶ。会社勤めの自分にはない感覚で、考え方や気持ちの大きさに頭が下がる。

8月を迎えてもなおパッとしない天気の日もあるとはいえ、夏が来た。暑い日は気温30度を超える日もある。暑さは喉の渇きを誘い、シャンパーニュを飲みたい気持ちにさせてくれる。世界遺産に登録されてから1年、今夏のシャンパーニュ通りは、さながら「テラス天国」となった。

大手メゾンが軒を連ねる通りだが、有料試飲用のテラス席を設置しているのは、主に中小規模の生産者だ。昨夏は4軒だったが、今年は6軒になった。なかには夏季限定営業のテラスもあり、観光客の人気を集めている。相場価格はグラス5ユーロ、ボトル30ユーロからといったところだ。

コーヒーが飲みたいと思ってもカフェは1軒もないけれど、シャンパーニュを飲む場所には困らない特別な通りだ。とはいえ、夜7時には、どこもあっさりと閉店してしまう。シャンパーニュのはしご酒は昼のうちにどうぞ。

 

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Janisson Baradonのブティック前にあるテラス。
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