単線の若狭鉄道に乗って「若狭」を目指す。
一両しかない車内は見たことのある顔がいっぱい。
5月10日に行われた「辨天娘」のきき酒会に出席した。
久しぶりの太田酒造場訪問だ。

前回は大雪で蔵にたどり着いたのが
なんと夜の10時になっていた。
夜遅かったのに、おじいちゃん、おばあちゃん、
社長、奥様と、今は嫁がれた洋子さんと、
太田家三世代で出迎えてくれた。
それから遅くまで皆で飲んだ。ありがたかった。

一目で大変仲良くあたたかな家族だとわかる。
その日は大雪が降るほどの寒さの中のひとり旅
だったし 個人的に自分だけでは解決できない
複雑な 思いを毎日持って生きていたこともあり、
太田家の温かさがとても心地よく、そして
ものすごくうらやましくも感じられた。
同時に「このご家族だからあの優しいお酒が
生まれるのだ」と思った。
もちろん科学的根拠など無い。私の主観である。
主観というより、ただの思い込みと言った方が良い。
でもその思い込みもお酒を美味しくする。
玄関先で社長と奥様、長男の章太郎さんの顔を見た途端、
その時の思いがどっと蘇った。

 

今回は多くのお客と一緒にきき酒をし
懇親会で飲んで語る会だ。

辨天娘はすべてのお酒の裏ラベルに、
「お燗にして食中酒としてお召し上がりください」
と書かれている。生の純米大吟醸にもだ。
力みもせずに「辨天娘はお燗専用に造った酒です」
と言っている。 お燗をして楽しみたい。

お酒にはそれぞれ設計思想がある。
冷やして飲むべき酒は冷やして飲む。
そうして初めてその設計と造りの技術が生かされる。
良く冷えているうちに飲まねばならない。
辨天娘は燗をして美味しくなるような設計である。
だから温めて飲む。そうして初めて生きる造りである。
蔵元も消費者も考え方と好みがあるからそれぞれで良い。
蔵元は蔵元それぞれの目指すお酒を造り、
消費者はたくさんのいろんな味わいを
楽しんでくれれば良いと思う。

多くの唎酒をしてテイスティングシートに ひとつひとつ書き込んでいく。

<続く>