三養醸造株式会社。山梨県山梨市市牧丘町。
都市部に居住していらっしゃる方から見ればもはや山間部の村落にしか見えない地域にあり、近くには武田信玄公の墓地がある乾徳山 恵林寺があります。
駐車場に置かれた仕込み用の古いホーロータンクには創業1933年(昭和8年)の文字があって、ワイン醸造の長い歴史が想像されます。

酒販免許を取得し酒小売店も長く経営されてきたため、当時の古い清酒メーカーの看板も現在は改装された天内に保管されています。

暖かく迎えてくれる山田啓二社長は物腰が大変温かく、言葉にもお人柄の優しさが伝わって来ます。自然とお話に聞き入ります。
豊富な資金で理想的な最新醸造所を建設し運営されるワイナリーが多いなかで、昭和の空気を感じられる三養醸造のような醸造所もたいへん味わい深く、多様な楽しみを感じることがことが出来ます。入り口にいる山田家の愛犬もおとなしく、ご主人同様に来客をほっとさせてくれます。

醸造所自体は建築年数を感じますが、中の醸造用タンクはステンレスのモダンなものです。そうでないと現代的レベルの醸造はできません。そのうえでにこの醸造環境が味に個性を与えてくれているように思えます。自社畑のブドウの出来や醸造へのオーナーの考え方・技術は言うまでもありませんが、画一的でないからこそ終わりのないワインの楽しみがあるのだと考えます。大変個性的で美味しいワインが生まれてきています。

「できることを工夫しながらやっているのですが、納得できるワインには…難しいですね」と山田社長は言います。とても控えめな話しぶりで好感を持たずにはいられません。委託醸造もされていますが、友人の醸造家にも大きな助力をされたりと自分中心主義でないその姿勢には大変感銘を受けます。多くの醸造所があっても、なかなかできることではないと思います。

生活にの中にあるワインという山田社長の自然体な優しいワインの味は、きっと多くのお客様を癒してくださることでしょう。「シャルドネコ」というワインを始め猫のイラストが描かれたラベルがあるのですが、かわいくユーモアあふれる名前です。お客様からのアイデアだそうですが、楽しいですね。

山田社長と奥様、そしてお父様が育てる畑はすぐ傍にあって目に留まります。甲州種、シャルドネ、ベーリーAなどの他にプティマンサンといった珍しい品種も栽培しています。山田社長「この畑は以前、僕がグチャグチャにしちゃったんです。妻に怒られました(笑)」という畑も現在は整っていましたが、「あれもこれも栽培したかったんですよ~」と照れながら仰っていました。

その土地の風土気候を表し醸造家自身の人間性や哲学が感じられるワインというお酒は楽しいですね。世界中で醸造されているその土地を、尋ねてみたくなります。私の言葉ではワイナリーのごくわずかしかお伝え出来ないと思いますが、またここで素晴らしく個性的な醸造家とその土地の風土を紹介させて頂きたいと思います。引き続き宜しくお願い申し上げます。