大変寂しく今も現実感がありません。義侠を醸す愛知県愛西市にある山忠本家酒造では春秋の二回きき酒会が催され、全国から特約店が出席してその年の新酒や熟成感を確かめ、仕入れをします。今年もそのきき酒会に出席してきました。

山忠本家酒造様と弊社のお取引は20年近くになります。まだ駆け出したばかりの私に厳しく、そして温かく見守ってくださった山田明洋社長。何回目かのお取引のお願いに伺っていた時、「わかった。帰りに酒を積んでいくか?」と言ってくださったあの瞬間はいまでも忘れられません。日本最高クラスの兵庫県東条町産の特A地区山田錦だけを使い純米酒を醸し、香りは極力抑えて味にフォーカスし、どっしりとした豊かな旨味と伸びやかな酸味の溶け込んだフルボディの味わいでファンを魅了しました。長く待ってくださっていた当店のお客様には大変喜んでいただいたことは言うまでもございません。当店が直営している「十四番目の月」で、義侠・山田社長を囲む会を開催した時の緊張とお客様の喜びの声は今も心にしっかりと残って大変素晴らしい思い出となっております。

長年日本酒業界の中でも孤高の道と尊敬を集めてこられた山田社長が先月末、4年以上に渡る闘病の末ご逝去なされました。
このところ神亀酒造の小川原良征専務に続き、駆け出しの頃から私が大変お世話になった蔵元が亡くなられてとても寂しい気持ちでいっぱいでした。しかしここ山忠本家酒造にはとても心強い後継者がいらっしゃいます。山田昌弘専務、その人です。山田明洋社長に期待され鍛え抜かれた昌弘専務はもう立派な「愛と義侠心」を備えた立派な経営者になっておられます。きっと明洋社長も安心なさっておられることでしょう。

今年は義侠の新章の開幕といっていい年になりました。しっかりとした発酵で糖分を過剰に残さずキレの良い味と美しく上品にまとまった味わいです。ほどなく入荷する義侠を、どうぞご期待ください。