2015年dancyu2月号です。生酛(きもと)を大々的に取り上げています。
その紙面上で私も意見を述べる機会を頂きました。

少し生酛の説明をいたします。生酛は江戸時代から今に伝わる日本酒の伝統的な酛(酒母)の造り方で、モロミの中で天然の乳酸菌を培養しそれから得られる乳酸で雑菌の繁殖を抑えながら同時に強い発酵力と高濃度のアルコールでも死滅し難い酵母を育てます。強い酵母はアルコール発酵を力強くするだけでなく、発酵の末期に死滅して雑味成分を出すことが少ないためすっきりとしながらも余韻のしっかり感じられる太い味わいのお酒を生み出すのです。
「半切り桶」と呼ばれる木製の桶に入れた蒸米・水・米麹を木製の棒(櫂)ですりつぶす「山卸・やまおろし」(この作業を廃止した造りが「山廃酛」)をし、25日ほどもかけてゆっくり酵母を育てていきます。亜硝酸還元菌や天然の乳酸菌・酵母が次々に入れ替わって繁殖をする複雑な自然のメカニズムを勘と経験だけでコントロールして美酒を造りだすという、まさに日本高い技術の結晶的酒造りでしたが明治に入り市販の乳酸を使うリスクの少ない「速醸酛」が開発されると速醸酛が主流になっていきました。

そして今、その伝統の造りを取り上げ、現代の生酛事情を知ろうとしたのがこの特集です。

現代の醸造科学や技術がどう生酛を進化させたのか。
編集部で53種類もの生酛のお酒をテイスティングする機会を頂きました。
これはめったにあることではありません。大変貴重な体験をいたしました。
この号ではコメントだけでなく、小さいながら私の写真も掲載頂きました。

ぜひともご一読いただきたい一冊です。

【依田浩毅】