新年を迎えてすぐ、全国から酒販店と飲食店が集まり勉強会が開かれている。毎年一回開催だが今年でもう20年以上になり、通称MH会と呼ばれている。
純米酒とそれを販売する酒販店、そしてそのパートナー飲食店の店主やスタッフが参加し全国各地で開かれている勉強会だが今年は依田酒店が幹事のため、山梨県甲府市での開催となった。

参加者の人数だけ唎酒する種類がある。今回は40名の参加者の為40本。最高で120本をテイスティングしたことがあるため多いとは感じない。むしろしっかり唎酒が出来て良い。その分時間をかけてお酒の特徴を探った。
テイスティングの後はランダムにコメントを求められる勉強会の本会が始まる。唎酒で手を抜くとここで恥をかく。もちろん誰かが責めたりするわけじゃないが、自分で自分が恥ずかしくなる。
唎酒に出されるお酒はすべて純米酒(手ごろな価格のものから高価なものまで)だがいろんな味わいのものが集まるのが特徴で、そこが難しくも楽しくもある。多様な長所、または欠点が見える。多くの人間で同じ酒を同時に唎酒をし、いろんな意見を知ることで自身では気づかなかったことを知ることができのだ。みな真剣に唎酒に望んでいる。多くの人間がいるのに、唎酒中にしゃべる者はいない。口中で空気と酒を混ぜる、「ズっ…」というちいさな音が時折するだけだ。
唎酒全景

本会ではこの会の提案者である福岡の全量純米蔵である(株)杜の蔵の溝口晴夫氏の挨拶と酒販業界の現在の状況を解説に続き、唎酒のコメント、答え合わせが行われた。続いて出席者全員の一分間スピーチ。これは去年の報告と今年の目標などを全員名前で発表する。達成できた喜びと充実感、出来なかった反省が入り混じる。私も今年の目標を述べ、実現を皆の前で誓った。

引き続き今回のセミナーに映った。今回は開催地が山梨ということもあり、ワインに特化することにした。
セミナーの講師陣は若手ワイン醸造家のグループ、「アサンブラージュ」のメンバー。

アサンブラージュのメンバー

*「アサンブラージュ」のメンバー。クリックで写真が拡大できます。

くらむぼんワインの野沢たかひこ氏、ドメーヌQの久保寺慎史氏(当日インフルエンザで急遽病欠)、蒼龍葡萄酒の鈴木大三氏、アルプスワインの前島良氏、マルサン葡萄酒の若尾亮氏、麻屋葡萄酒の雨宮一樹氏、塩山洋酒の萩原弘基氏というあふれる熱意と哲学を持った醸造家が二時間の長丁場の講師を引き受けてくれた。

ワインも清酒も醸造酒である。同じ醸造酒(ウイスキーや焼酎は蒸留酒)であり、食事の最中に楽しむ酒として有史以前からの歴史がある酒同士だ。ワインから学ぶことは大変多いことから、今回のセミナーではワイン自体だけでなく、造り手それぞれが持つ考え方や手法の違いを学ぶと同時に、流通や今後の課題を共有しともに考える素晴らしい機会となったと感じている。

本会が終了すると懇親会である。実はここが重要で、全国の飲食の現場からの生の声を聞くことができるからだ。普通に飯を食って飲んでいるだけの人は、何ともったいない事をしているのだと言いたい。積極的に話に参加し、情報を共有し問題があればアドバイスを求めることができるこの懇親会こそ隠れた勉強の本会でもある。それからするとこの後の二次会は、まさに本番中の本番、本音が飛び交う情報交換の場だ。だからほぼ全員深夜、または明け方までの耐久勉強レースに身を投じる。私が駆け出しのころ、同じように手探りをしている酒販店の同士と勉強会ができないかと溝口氏に相談したところ始まったこの会だがもう20年以上経つが、今も深夜までの熱い語りは変わらない。若手酒販店や飲食店経営者が参加しいつのまにかベテランの域にはいってきた私だって気は抜かない。これからも一生懸命自分に負荷をかけ、身体と心を強くしていく必要と喜びを感じた、新春の勉強会であった。

懇親会の乾杯

懇親会

懇親会も勉強の場。気を抜くのはもったいない。

 

二次会は耐久勉強会。本音が飛び交う。

超千年の宴

 

 

文・依田浩毅