ロゼが売れる。昨年と今年で、お客さんのロゼの買い方が明らかに違っている。昨年は、シャンパーニュを買ったうち、ロゼも1、2本混ぜておこうかという買い方がほとんどだった。今年はロゼをケース単位(1箱6本入り)で買うお客さんがとにかく増えた。ブティックが開店して1年が経過したので、前年の売上データと比較できるようになった。実際にロゼの売上は前年比2倍を上回っている。ロゼに対して特別な販促活動は行っていない。確実に需要が増えている。

日本でもシャンパーニュに限らず、スティルワインであっても「ロゼ=甘口」のイメージを持っている人はいる。ブティックで接客していても「このロゼは甘口ですか?」と質問されることが多かった。しかし最近は「このロゼは、赤ワインをブレンドしていますか?それとも、ブドウの皮から色がついていますか?」と、アッサンブラージュ(ブレンド)か、それともセニエ式なのか、ロゼの製法について、もうひとつ踏み込んだ質問するお客さんも少なくない。

毎年4月に行われるプロ向けシャンパーニュ試飲会「シャンパーニュ・ウイーク」でも、今年はロゼの紹介が昨年よりも増えている印象を受けた。特に「セニエ式ロゼ」の造り手が増えたように思う。

ブティックにテラスが併設されてからは、メニューを見ることなしに「ロゼある?」と聞かれる。とにかくロゼが飲みたいという様子だ。ロゼを注文する女性のお客さんが多いのは本当だが、女性だけとは限らない。例えば、カップル客からエクストラ・ブリュットとロゼの注文を受けてテーブルにグラスを運んでいくと「ロゼは僕に」と言われるパターンも多い。

冬を迎えようとしている今でも、ロゼの人気は続いている。ロゼはそのピンクの華やかな色が醸す雰囲気のせいか、多くの生産者の販売コピーは「エレガント推し」の傾向がある。ジャニソン・バラドンのロゼは、エレガントというよりは「サンパ(感じが良い)」なロゼだ。苺やフランボワーズのような、新鮮な赤い実のフルーツのままの色と香り。やさしいタンニンを感じる。ブリュットではあるものの、ほのかに自然な甘さがある。気取ったところがなくて、寛いだ気分にさせてくれる。

ワインの味わいに作り手の人柄が出るとよく言うけれども、一緒に働くわたしから見て、このロゼにこそ、難しいところのないジャニソン兄弟の性格が意外と反映されているように思う。そういえばこの兄弟、フランス男性ということを差し引いても、どちらもピンク着用率が高いのは気のせいではあるまい。

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【山田 宏美】