甲府駅前の十四番目の月にて、奥野田ワインのためのリーデルグラスセミナーが開催された。

セミナーの講師はリーデル社 シニア ワイングラス エデュケーター、庄司大輔氏。
そして味わうワインは中村社長夫妻が醸す奥野田葡萄酒のワインたち。

満席の会場に庄司氏、中村社長のスピーチから始まった。
リーデル社の歴史や哲学などが紹介され、そして今回使用するグラスそれぞれの特徴の説明がされた。
当日使用されたのはソーヴィニヨンブラン、モンラッシェ、カベルネソーヴィニヨン、ピノノワールの各スタイル4グラス。

甲州種のスパークリングであるフリザンテはソーヴィニヨンブラン向けに設計されたグラスで味わう。オリを含んでうすく白みがかった色調。柑橘系の涼しげなレモン、グレープフルーツ、青りんご、そして酵母由来のふっくらしたパンの香りが立ち、その広がりと酸味の鮮烈さがより味わえた。合わせる前菜は十四番目の月料理長・小林による酢取り大根とスモークサーモンのカルパッチョ。日本料理に甲州種のワインは間違いなく合う。美味しい。

 

次は桜沢シャルドネ。このワインは自社畑のシャルドネ種をオーク樽で発酵後、六か月間熟成したワイン。合わせるグラスはオーク樽を使用したワインを生かす「シャルドネ(モンラッシェ)」。
この段でひとつの実験が行われた。最初にソーヴィニヨンブランのグラスで少しだけテイスティングする。白桃やレモン、ナッツ、ハーブなどのアロマがしっかりと感じられ美味しいの声が聴かれた。しかしその直後にモンラッシェグラスに入った同ワインを口にしようとした瞬間、まだ口に一滴も入る前に、参加者全員から大きな感嘆の声が上がった。香りが大きく開いていく様がありありと見えるようにすら感じたのだ。実際の味わいも同様に大変豊かに感じることができた。香り同様の果実味が豊かに広がるうえ芯のある酸味が味の周囲を引き締め、ナッツやトーストアフターを実に豪華に引き延ばすかのようだ。

ここで奥野田の中村社長の予想もしない言葉が聞かれた。

「俺、こんなにうまいワインを造ってたんだ!」

もちろん承知はしていた事だろうがリーデル社のモンラッシェグラスによって持っていたポテンシャルをより発揮したこととこのセミナーの雰囲気や庄司氏から受けた感銘が後押ししたためだろう。
料理はコクがありクリーミーでハーブも意識した「地鶏の胸肉の大葉巻ポワレ・チーズソース」でその豊かなワインに華を添えた。

 

次に体験するのはラ・フロレット・スミレルージュ。中村社長の奥様がエチケットの絵を描いたことから生まれたワインだ。大ぶりのピノノワールグラスで味わう。ワインはメルロー種100%で、輝きのあるルビー。名前通りスミレの花やブルーベリー、カシスの香り。果実味も豊かでフルーツ樽からのニュアンスもほどよいミディアムボディ。ピノノワールのグラスがぴったりと合った。滑らかに口中に広がる果実味と香りに包まれると会場は笑顔があふれ、喜びの声の声のハーモニーがCメジャーセブンスコードのように明るく広がる。
なかむらあきこさん

ここで庄司氏は適量に注がれたワインのグラスをテーブルに横倒しに置いた。見守っていた参加者は一瞬息を飲む。しかしグラスの中のワインはこぼれない。「このグラスは水平にしても中のワインが口中に入ってこないように設計されています」「そうすると顔を高い位置まで上に向けてワインを味わうことになりますから舌の全体に広くワインが広がってこの種のエレガントなワインをしっかり味わうことが出来るのです」。そこまで考えられて設計されているリーデル社のグラスである。

 

そしてメインディッシュ、牛ほほ肉のシチューに合わせるのはボルドーのカベルネソーヴィニヨン向けに作られたグラスに注がれた「ヒヤケ・ヴィンヤード・グランダネ 2011」。カベルネソーヴィニヨン100%によるフルボディの赤ワインだ。良く熟したカベルネソーヴィニヨンはわずかにエッジにオレンジが見て取れる輝きのあるガーネット、カシスやブラックベリー、スパイス、チョコレート。味はしっかりとしたタンニンが感じられるが柔らかで果実味に馴染んでいる。苗の植え付けから15年経ちやっと思うワインに仕上がるようになってきたとのこと。良い年だけ仕込みリリースされ、この年は543本しかないものだった。
これもピノノワールのグラスと交互に試飲してみた。するとピノノワールグラスでは柔らかく感じられた味がカベルネソーヴィニヨンのグラスではしっかりと直線的にワインの力強い果実味とタンニンが感じられた。これほど違いが出ると楽しくて仕方ない。全部のグラスで試してみたが一番合っていたのがやはりカベルネソーヴィニヨングラスだった。

終盤に庄司氏がグラスの洗浄方法のレクチャーがあった。拭きあげる時にステムとボウルを捻らないよう等の注意事項を述べながらの実演に拍手が沸き起こった。

グラスの拭き方

 

そして膨大な設計時間と試飲を重ねて出来上がったであろうリーデル社のグラスに感動したこのセミナーをまた開催することを約束し、盛会裏にセミナーはお開きとなった。

Special Thanks to Takashi Eguchi

お開き