この講座は山梨学院ワイン講座2014の 特別編として東北のワインにフォーカスを当て、造り手をお招きしてワイナリーの思想や文化・環境を知りより深く知ろうとする試み。その4が去る2015年2月21日、山梨学院大学キャンパス内にあるStudent Lounge ‘Y’ にて定員いっぱいの参加者で開かれた。

今回は月山形県鶴岡市にある月山ワイン山ぶどう研究所。さくらんぼの生産日本一でありワイン醸造、特に甲州種の栽培がされるなど、山梨県とも共通点が多い土地柄のワイナリー。

午後四時、オープニングトークに笹本環境オフィス代表取締役・笹本貴之氏、依田酒店代表取締役社長 依田浩毅。
続いて葡萄酒技術研究会会員認定エノログであり月山ワイン山ぶどう研究所の阿部豊和研究員による講義が行われた。阿部氏はワインだけでなく清酒メーカーに勤務したこともあり日本の酒に造詣が深い。沢山のスライドを使っての葡萄の栽培や醸造環境ほか大変興味深い説明がなされた。

月山ワイン山ぶどう研究所は社名にもあるように、山ぶどうに力を入れている。
ヤマ・ソーヴィニオンは山梨大学の山川祥秀氏が1990年に作り出した赤ワイン品種で山ぶどうとカベルネ・ソーヴィニョンの交配品種。日本の生育環境に適したワイン醸造用にと開発された品種だ。山ぶどうの寒冷地に適した耐候性とヨーロッパ系伝統高貴品種のワインに適した味わいを併せ持つことを目指して開発されている。このことからも山梨県とのつながりを感じてしまった。寒冷地の栽培の苦労とその末のワインの出来上がりに感動するとともに、現在の山ぶどうのポテンシャルと未来の可能性をあくまで俯瞰して見た感想を話してくれた事には参加者のほとんどが静かに感銘を受けた。

第二部は講師を囲んでの試飲と意見交換。
試飲アイテムの説明が試飲指導のシニアソムリエの小牧康伸山梨学院短期大学非常勤講師からされ、パーティ形式の試飲へとなった。試飲助手として依田浩毅、十四番目の月店長・依田順子もソムリエナイフを握った。

試飲ワインは以下の通り。
月山ワイン ソレイユ・ルバン 甲州シュールリー 2013
月山ワイン ソレイユ・ルバン セミドライ 2013
月山ワイン ソレイユ・ルバン ヤマソービニオン 2012
月山ワイン ソレイユ・ルバン カベルネソービニヨン 2012
月山ワイン ソレイユ・ルバン ヴィティスコワニティバレル 2012
月山ワイン ソレイユ・ルバン ルージュ 2011

このワイン講座はとても料理が充実している。メニューは以下の通り。
洋風オードブル盛り合わせ
海老のフリッターオーロラソース
フェットチーネ ゴルゴンゾーラソース
トマトとモッツァレラチーズのカプレーゼ
シーザーサラダ
ポテトサラダ
甲州ワインビーフのローストビーフ

以上に山形の郷土料理として、さらにこの二品。
「お煮しめ」
「はたはたの唐揚げ」
(*はたはたは古語で雷の擬音語。現代の「ゴロゴロ」にあたる。雷の鳴る11月頃に獲れるのでカミナリウオの別名もある。冬の日本海の荒波の中で獲り難いことから「波多波多」と書くこともある)

同じ土地で育った料理とワインは理屈抜きに楽しめる。この講座では必ず郷土料理が出されている。

 

出席者はそれぞれの感想や質問を積極的に講師に伝え、講座はどんどんと盛り上がっていく。空になっていくワインのボトルがその熱気を物語る。
月山ワイン講座パーティ参加者

いよいよお開きの時間が迫った。恒例の余りワインオークションだ。売上は復興支援に寄付される。
次々とあがる参加者の手にワインたちが競り落とされていく。試飲で気に入ったワインが手に入った参加者は「家に帰ってからじっくりともう一度楽しみます。新しいワインと造り手に触れられてうれしい」と頬を紅潮させながら語った。

ワインはその土地と文化にとても密接に関係している。
山形でのワイン造りにおける山ぶどうの研究。自然と人との関わりがワインの味につながり、それがまた両者を深く繋げるように感じられる講座となった。

 

*山梨学院大学生涯学習センターの永井健夫氏には心より感謝申し上げます。

(依田酒店)